Diamond Ф Bangle

*マイソロ2設定ジェイルク
 (ルークはグランマニエ公国の貴族。皇帝はピオニー陛下。ジェイドはルークの護衛兼家庭教師。アッシュはルークの双子の弟。アニスはルークの護衛、現在家出?中)
*捏造最多。

*それでもおkな方だけドウゾ。







簡素だが清潔なシーツに夕焼の朱を散らしたこどもが、ゆらりと揺れるような瞳を開いた。

「…ジェイド?」

最小限に灯りを落とした部屋の中に、確かに眠る直前までは居なかった姿を認めて呼びかければ掠れたような声が漏れる。
ジェイドは目が悪くなりそうな小さな灯りに照らされた本をパタリと閉じて、ルークの前髪をかき上げるように撫ぜて小さく笑った。

「起こしてしまいましたね。少しだけ側に居たらわたしも部屋に帰ろうかと思っていたのですが」

先日駄々をこねて以来、毎日とは言えないがこうして以前より頻繁にグランマニエ一行に宛がわれたゲストルームを訪れるようになったジェイドの指先に、ルークは無意識に擦り寄るような仕草を見せる。

「みんなは?」
「ティアは仮眠中ですが、ガイは情報収集に回っています」

そうか。
と声にならない唇で答えて、ジェイドの口から出なかったもう一人の護衛役であるアニスのことを思う。
ガイが情報収集に行っているということは、アニスの行方は未だに分かっていないのだろう。
ジェイドにもアドリビトムの船長であるチャットにも無言のまま船を出てからもう3日を過ぎようとしている。アニスならどこででもピンピンしていそうな気もするが、突然居なくなってしまった仲間を心配しないわけがない。

「俺…アニスが悩んでたなんて全然気が付かなかった」

まるで許しを請うように口にすれば、温かな布団に守られた胸に淀みのようなものが溜まっていく。

「自分のことばっかりで、ちゃんと…俺がしっかりしてなきゃいけなかったのに…」
「そうですね。もっとルークには主としての自覚を持っていただかなければいけません」
「ですが、」

切られた言葉に新緑の瞳を開けば、こちらを真っ直ぐに覗きこんでいる赤い視線とかち合った。

「貴方がそうして何かしらの自覚を持っていただけたことに関しては、アニスに感謝しなくてはなりません」

真実、アニスが船を出て行った理由は誰にも分かっていないのに?
ルークは柔らかな枕の上でわずかに首を傾げた。
同時に居なくなったクロエが昨日迎えに行ったセネルと供に帰ってきたときの話を聞く限り、決して安穏としてはいられない。と昼間呟いたティアの言葉が甦る。
何があったのか詳しく教えてはくれなかったが、それでも何か良くないことが起こったことだけはわかっていた。
それにひとの一手も二手も先まで物事を読んでいるジェイドのことだ。きっとクロエの報告も受けているだろうし、それでも尚、こうしてルークが主たる自覚が出たことを喜ぶというのなら何かしらの算段があるのだろう。
さっきまで眠っていた故に温かな指先を未だに額に添えられたままのジェイドの手に添える。

「早く、アニスを見つけて。ちゃんと話を聞こう」
「そうですね。根掘り葉掘りしっかりお仕置きも込めて」

向けられた満面の笑みに一瞬、ゾクリとした何かが走る。
この男がこうして笑うときは大概なにか良くないことを考えていることを身をもって知ってしまっているルークは、思わず戦いた。
屋敷から抜け出したところをジェイドに見つかってそれはそれは酷い目に…あったのだ。うん。
あまり思い出したくない記憶にルークは薄いまぶたを閉じて、不穏な笑みを視界から締め出した。

「もう、眠りなさい。夜は長い、いざ迎えに行くという時に体調を崩されては困ります」
「おやすみ。ジェイド」
「はい。おやすみなさいルーク」

パチリ、と小さな灯りが落とされた。